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悩める経営者

最終更新:2006年12月15日 13:45

悩める経営者


授業の一こま


「ある中小企業では5人の従業員を雇用している。
会社存続のため、このなかの1人を解雇しなければならない。
Aさんは、一番仕事ができる。
Bさんは、次に仕事ができる。
Cさんは、まぁまぁ仕事ができる。
Dさんは、介護者のため定時に帰宅しなければならない。
Eさんは、障害者であり、他の4人と比較すると仕事が遅い。
同じ給料を支払っているとすると経営者は、
誰を解雇するのが一番良い選択であろうか?」


出席した学生は考え込んだ。意見は分かれ、議論となった。
「Aさんは、仕事ができるからすぐ転職できると思う。」
「Aさんがいなくなったら、会社は損よ。」
「じゃあ、Bさんかなぁ。」
「Dさんは、仕事を辞めて、思う存分介護した方がいいんじゃない。」
「会社を守るため、結局は仕事のできない障害者に
辞めてもらうのが一番いいのかな。」
派手めの男子学生は、「障害者を解雇するなんて許せない。」と声を荒立てる。


有能な人材は、会社の業績向上のために必要性が高い。
社会的弱者を解雇するには忍びない。
さほど有能ではないCさんにも、彼を支えに生活している家族が存在する。
解雇は、勤め人にとって死活問題だ。
反面、解雇によって人件費を削減しなければ会社は倒産する。


学生は、経営者と従業員と板挟みから「どうしたらよいか」と真剣に悩んでくれた。


実際の経営者もまた深刻な「悩み」をかかえている。
リストラの必要性は十分理解しているが、自企業の業績も次第に落ち込んでいる。
しかしだからいって、これまで長く勤務し、
会社に貢献してくれた従業員を簡単に解雇してよいのだろうかと、
夜も寝られず一人悩む。


仕事柄、私はこうした経営者からよく相談される。
「会社が苦しいので従業員を整理しなければならないのですが、
従業員の首を切るのは忍びない。」
善良で、まじめに会社を運営してきた経営者ほどその悩みは深い。


従業員を解雇することが必ずしも好ましくないことはわかっているが、
だからといって会社が倒産しては元も子もない。
従業員を雇い続けて、なお会社も存続させる方策を見つけるのは至難の技だ。
妙案はない。


「だったらどうしたらいいの?」と学生も途方にくれる。


多分、正解はないであろう。


正解はないが、決断を先延ばしできるほど現実は甘くない。
しかし私は、真剣に悩む学生や経営者にこそ共感を感じる。


安易なリストラによって自分だけ生き残ろうとする経営者よりも、
悩み立ちつくす人々に未来があることを信じたい。
なぜなら、21世紀のわが国は、未曾有の高齢化社会に突入し、
さまざまな人々がお互いに支え合う共生を不可欠とするからである。


やさしくなければ意味がない社会は、もともと矛盾を内在しているといえよう。



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