事業承継
最終更新:2006年12月15日 13:45「事業承継」について星和ビジネスサポートの
FAXリポートにQ&Aで原稿を執筆しました。
Q:技術課長をやっている息子に後を継がせたいと思っており、
幸いなことに本人にもその気はあるようです。
しかし、経験未熟なところ以外に、
対人折衝が苦手で職人肌の気質も気がかりです。
あるいは他に後継者を求めるべきか悩んでいます。
A:「中小企業白書」(2005年度版)によれば、
後継者がみつからず「廃業・精算」する企業の割合が増えており、
深刻な問題になっているということです。
幸い、御社の場合、技術課長の息子さんに
後継者になってもらいたいと思っていること、
息子さんもその気があるということ、喜ばしいことだと思います。
ご相談の内容によりますと、息子さんの「経験未熟な点」に加え、
「対人折衝が苦手」「職人肌気質」を心配なさっているようですね。
「他に後継者を求めるべきか悩んでいる」ということですが、
まずは、息子さんを後継者として育成することをおすすめします。
後継者育成期間を設けて、あなた自身が指導にあたり、
それでも「息子には経営者としての資質はない」と判断したとき、
他に後継者を求めたらどうでしょうか?
息子さんの他、考えられる後継者としては、
親族では「現社長の兄弟、社長の配偶者、娘婿」、
社内では「役員、従業員」、社外では「事業経営を希望する者、
他社の経営者、取引先などの従業員など」が考えられるでしょう。
いずれにせよ、親族や従業員を後継者として育成することも、
社外から適任者をさがすことも、
息子さんを後継者として育成するよりも難しいと思われます。
そこで、回答では、息子さんを後継者としてどのように育成したらよいか、
お話させていただきたいと思います。
1・どのように後継者にバトンタッチするか
質問では、息子さんの年齢がわかりませんが、
おおよその後継者育成時期・期間について説明したいと思います。
①後継者育成
後継者が、30代後半になったら、
経営者として必要な能力を育成する期間に入ったと考えます。
経営者は、55歳から60歳の間くらいになると思われます。
育成期間は、2年から5年くらいを考えてください。
②社長を譲り、会長になる
後継者が40代のとき社長を譲り、事業を任せます。
ご自身は代表権のある会長になり、経営を側面から支援するとよいでしょう。
そのときの状況や後継者の経営手腕にもよりますが、
会長となったら必ずしも毎日出社する必要もありません。
安心して経営を任せられるようになったら、出社日数を少しずつ減らしていくことです。
③経営を社長に任せ、会長から相談役になる
後継者が40代後半から50代前半になったら、
完全に引退するまたは相談役になって後継者が相談をもとめてきたら、
対応するくらいがいいでしょう。
高齢となっていることと思われますから、
いつまでも、会社にしばられているようではいけません。
2・どのように後継者を育成するか
後継者育成期間には、後継者とともに次のことに取り組んでください。
①経営理念、経営方針をたてる。
後継者育成支援に携わっておりますが、
後継者に会社の経営理念をおききすると
なかなかさっと答えられる方はいらっしゃいません。
経営理念が立派な額に入っていたとしても、
後継者の頭のなかまで入っていない企業は多くあります。
そこで、後継者とともに、経営理念を見直し、
経営者の経営に対する考えと後継者の考えをすりあわせ、
新しい理念や方針をたてることをおすすめします。
②経営計画を策定する。
御社は、経営計画(年度計画や中期事業計画)を策定しているでしょうか?
小規模企業では、経営計画を策定していないところもあります。
経営計画を策定していない場合は、
経営者と後継者で力を合わせて策定してみてください。
計画は、経営をどのようにしていくか、方向を示すものです。
すでに経営計画を毎年策定している場合は、
新年度、後継者を中心に計画を策定してください。
後継者が経営者として計画を立てる練習です。
後継者に経営計画の策定方法を伝授し、
後継者の考えを盛り込みながら、計画をたてることが大切です。
③経営計画の実行・管理
後継者を中心に計画の実行、管理を行ってください。
このとき、経営会議(幹部社員会議)を毎月開催してください。
後継者育成期間においては、経営者が中心となって会議を運営してください。
後継者に社長を譲り、会長となった後は、経営会議は後継者に任せ、
会長は出席しない方がよいでしょう。
会議の後、社長が報告するくらいにします。
会長として、経営を支援する立場で自分の意見を押しつけるのではなく、
「こう考えたらどうか」「こういう見方もできるね」などと助言・応援をしてください。
④金融機関対策
これまでは、経営者の信用で借入を行ってきました。
金融機関対策では、これからも経営者のお力が必要になると思いますが、
後継者も金融機関からの信用を得なければなりません。
後継者育成期間では、金融機関に対し、
後継者に経営の現状を報告させるとよいと思います。
「現状をみて、どのように対応しようとしているのか」まで説明できるようになれば、
金融機関との信頼関係も築けるようになるでしょう。
3.後継者に求められる資質
後継者育成にあたり、後継者には、
どのような能力が求められているか確認しておきます。
後継者に求められる資質としては、
「目標を達成しようとする強い意志」「経営を数値で把握できる財務管理能力」
「従業員の生活を支えているという責任感」
「従業員のモチベーションをアップさせるリーダーシップ」などです。
不足する能力について、後継者を育成するとともに、
後継者の能力を補う右腕を置くことが必要でしょう。
加えて、後継者が相談できる専門家をみつけておくことも考えてください。
①後継者の右腕
全ての能力を兼ね備えている後継者はいません。
そこで、後継者の右腕となる役員、従業員を育成しておくことも、
経営者としての役割といえます。
御社の場合、後継者が技術課長であり、対人折衝が苦手ということから、
営業面に強い従業員を右腕として育成することが必要です。
また、財務管理能力、人事管理能力などに長けた
総務全般を担当する従業員も必要となるでしょう。
こうした後継者を支える人材の育成について、
事業承継の準備として進めておいてください。
②後継者の相談相手
後継者が経営について相談できる相手をみつけておくことも考えてください。
後継者の相談相手としては、会社が会員になっている商工会、
商工会議所の経営指導員、顧問税理士、経営コンサルタントなどです。
後継者として事業を引継ぎ、
焦りや不安を持ったり、ストレスを感じたりすることもあるでしょう。
気軽に経営について相談相手を紹介したり、
引き合わせたりすることも検討してみてください。
4・後継者育成の留意点
自分の息子が後継者となったとしても、
従業員や社外の人が後継者として入社したとしても後継者とは、
はじめから意見が合わないものと考えてください。
「なんで俺の言うことがわからないのだ」
「俺はこうだった」などと嘆くことは禁物です。
後継者と意見が合わず、言い合いになるたび、
肩を落としている経営者もいらっしゃいます。
経営者と後継者とでは、おおよそ20歳から30歳の年齢差があります。
学生時代に経験したことも、働くようになってからの経営環境も違います。
生きた時代が違うのだから、
意見や価値観が一致しないのは当然だと思うことが大切です。
考えがぶつかりけんかになることを前提に気持ちに余裕を持って、
後継者を育成・支援することが必要ですね。
参考文献 中小企業白書(2005年版)
中小企業診断士 茂木三枝
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