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気軽な相談相手

最終更新:2006年12月15日 13:52

上毛新聞「オピニオン」に
「気軽な相談相手が必要」という原稿を執筆しました。


突然、経営者である中年の女性の目から涙が流れ落ちた。


東京都某区が実施している中小企業の
事業資金貸付制度(無担保・無保証)の貸付審査に出向いた時のことだ。
 

この貸付は、区が直接融資を行うもので、
「区の斡旋融資を利用して資金の貸付を銀行等から受けられない」ことが
融資条件となっている。


銀行の貸し渋り対策として、どこも相手にしてくれない中小企業しか、
申し込みを行えないのである。


これまで、運送業者や車の整備工場を何十軒も審査で伺ったが、
今日は身近な喫茶店ということで心が弾んだ。


この喫茶店は、昔ながらの手書きメニューのお店である。


昼時に私が伺うと、お客は一人もなく、
ひっそりとした雰囲気で中年の女性店主が出迎えてくれた。


店主は、日ましに客数が減少し、毎日の閉店時間が怖いと言う。
締めの計算をすると、売上は一万円にも満たないと涙をこぼした。
この貸付を利用し、古いテーブル、イス、照明を買い換え、
明るい喫茶店にリニューアルしたいと考えている。


「テーブルやイスを新しくすることで、お客が来るでしょうか?」
店主は、不安そうにたずねた。
そこで、気分転換も兼ね、2人で店近辺を歩くと、
ここは商店街のそばで、まわりには、団地がたくさんある。
家族向きの店舗にし、メニューもそれに合わせて見直しを行えば、
お客が増えそうだと話し合った。


きっと彼女は、これまでずっと、独りきりで悩んでいたにちがいない。
今後どうしたらよいのか必死に模索してきたが、相談する相手もなく
途方にくれていたのだろう。


初めて会う私に向かって、涙ながらに苦しい実状をうったえたのだ。
おとなしそうな感じを受けるだけに、その真剣さとひたむきさとが私の胸を打った。


中小企業を回ってみてわかったことは、意外に経営者が孤独だということだ。
これまで、中小零細企業の経営者が、
正直に会社経営やその内情を話せる相手や
相談できる機関があっただろうか?


中小企業をとりまく環境は厳しく、廃業が相次いでいる。
日本的な下請二重構造が崩壊し、中小企業の3分の1が消えるといわれている。
しかし、その中小企業が今日の日本を築いてきたのである。
そして、これからもそうあってほしいと思う。
求められているのは、再び彼らを元気づける支援者の存在だ。


涙を流した女性店主も、最後には笑って私の手を握って、
「これからもがんばる」と言ってくれた。


生き残りをかけて、独りで悩む中小企業経営者にとって、
気軽に相談相手になってくれる人、正直に悩みを話せる人が必要であろう。


孤独な経営者を励まし、勇気づけ、「これでいいのか」と躊躇している時に、
「大丈夫」と、ゴーサインを送る。


コンサルタントの本来の役割は、そんなところにあるのかもしれない。



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